主な作品
- 鉄腕アトム
- 鉄人28号
- エイトマン
有史以来、“人造人間”を夢見てきた人類。
やがて時計技術の誕生とともにオートマタ(からくり人形を)制作し、産業革命を経て金属むき出しの機械人間も夢想するようになります。
日に日に機械化が進む時代を背景に、チェコの国民的人気作家カレル・チャペックが1920年、戯曲「R.U.R.」で初めてロボットという言葉を世に発しました。
人びとが漠然といだいていたイメージに名前が付いたことによる影響力は巨大で、世界中でロボットは未来を表すキャッチフレーズとしてブームを巻き起こしました。
日本では戦後、漫画の世界でロボットはアイドルに。
以後テクノロジーの進化とともにさまざまな思考実験を繰り返しアニメーションのロボットと現実のロボットは、互いに影響しあい発展していくことになります。


1960年代は、日本が敗戦の衝撃からようやく抜けだして本格的な高度経済成長期にさしかかった時代です。その時期にテレビも当時の最先端メディアとして急速に家庭へと普及していきました。
翌年に東京オリンピックという大イベントを控えた1963年——初めての毎週30分の物語をつたえるテレビアニメが誕生します。それが手塚治虫原作『鉄腕アトム』です。この作品によってアニメは大ブームになり、各社がこぞって参入していきます。今日のアニメ大国の原点も、この時代にあるのです。
主人公のアトムがロボットだった影響で、続く作品も横山光輝原作『鉄人28号』や平井和正・桑田次郎(現:二郎)原作『エイトマン』など、ロボットがヒーローとして活躍するSFアニメが数多くつくられました。
この時期は各国で宇宙開発も盛んで、日本の繁栄も幸福も、科学技術のもたらしたものと考えられていました。特に都会では、あっという間にビルが建ち、道路が舗装され、街並みがみるみるきれいになっていきました。機械じかけで外見がツルンとしたロボットは、そうした風景の変化を先どりするものとして、人気を得たのかもしれません。
やがて60年代も後半になると、やはり手塚治虫原作の『マグマ大使』など特撮番組にもロボットが登場し、怪獣と戦い始めます。こうして1960年代に、後に発展するロボット映像文化の基礎が築かれたのでした。

1970年代にはいると、ロボットを扱ったアニメは、世界的にみてもユニークな進化をはじめます。変化のもとになったのは、1972年に放映された永井豪原作『マジンガーZ』でした。このヒットによって、『勇者ライディーン』や『UFO戦士 ダイアポロン』など、各社からロボットアニメが発表され、さかんにテレビで流れるようになります。
それらは、以前のロボットアニメとは何が違っていたのでしょうか? ひとつ目は「巨大であること」。ふたつ目は「人間が乗って操縦すること」。みっつ目は「変形や合体をするメカであること」。こうした特徴をもつロボットはSF小説の歴史にもなく、ここで開拓されたアニメ独自の文化と言えます。
このころ日本の社会では、急激に自動車が普及していきました。子どもたちにも、「自分で操縦できる乗り物」としてのロボットが、身近に感じられたのでしょう。このタイプは、やがて1979年の『機動戦士ガンダム』の登場で、メカニズムとしてより洗練され、リアルなものとして受け入れられていきます。
一方、アトムのように人格をもつロボットは、1979年にアニメ化された藤子不二雄F原作『ドラえもん』によって、熱いブームが起きます。いっしょに暮らす「ともだちロボット」というスタイルが、人気の秘密だったのでしょう。このように、1970年代はロボットアニメ文化がさらなる進化をとげる種まきが、いろんなかたちでなされていた時期なのです。
80年代は、ロボットアニメがブームとなって数が増えた一種の「収穫期」と言えます。それまで蓄積してきたスタイルが、さまざまに組みあわさり発展していった時期です。
ブームを引っぱったのは、1981年から公開された劇場版『機動戦士ガンダム』でした。子どもだけでなく青年以上の層もロボットの模型をつくり、アニメを鑑賞することが不自然ではなくなりました。その客層を前提として、80年代前半には多種多様な作品群が発表されています。玩具の変形合体機構が高度化したのもこの時期です。3体から5体だった合体機体数も15体のメカが合体する『機構艦隊ダイラガーXV』で記録を更新、『超時空要塞マクロス』ではロボットがほとんど現実の戦闘機と変わらないメカに変形し、それを再現した玩具や模型が話題を呼びました。
80年代後半になると、社会環境の変化がロボットアニメにも影響を与え始めます。ビデオデッキの普及で、テレビ放送ではなくソフト発売用のアニメが発売されます。そこから『機動警察パトレイバー』や『トップをねらえ!』のようなヒット作が生まれました。また、米国では『トランスフォーマー』がブームとなり、玩具製造を担当した日本に逆輸入されます。これはトラックや銃器に変形する主人公のロボットたちが2つの陣営に分かれて戦う物語です。自分の意識をもって言葉をしゃべるキャラクターとして描かれたロボットが、新しい印象を残しています。

80年代中盤以後は、家庭用TVゲームが急速に普及して子ども文化に影響を与えていきます。それは、仲間を集めて協力して敵を倒すRPGの登場により、豊かな物語性をもった新メディアに育ちました。
90年代のロボットアニメは、そのゲーム文化の強い影響を受けています。かつてのロボットファンも親の世代になり、小学生の主人公が復活。巨大ロボットを言葉を話す「友だちヒーロー」として扱う「勇者シリーズ」がこの時代の代表的なロボットアニメです。『小さな巨人ミクロマン』など、巨大さとは逆で手のひらサイズのロボットも話題を呼びますが、これもロボットと少年の距離が近くなり、友だちに変わった現れでしょう。
一方、作品それ自体の魅力を前面に打ち出したアニメも多く作られました。中でも1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』は、一般層を巻きこんで社会現象的を起こしたメガヒット作です。ブームの秘密は物語を引っぱる「謎」ですが、その中心にも主役EVAの正体が置かれていて、このジャンルの頂点と言える作り込みが大評判を呼びました。
90年代はゲーム文化でも「スーパーロボット大戦」という、アニメに登場してきた歴代ロボットヒーローが一堂に会するシミュレーションRPGが大ヒット。平行してガンダムや勇者などシリーズが着実に作り続けられ、ロボットアニメはジャンルとして完全に定着した感があります。
かつてロボットは「21世紀という未来」への憧れの象徴でした。鉄腕アトムの誕生が2003年に設定されているのが、何よりの証拠です。2000年代は、なんと言ってもその21世紀が現実となったことが大きく作品に影響を与えています。現実世界の2003年にも、アトム誕生を記念して『アストロボーイ・鉄腕アトム』がリメイクされ、フィクションと現実がつながっています。
新聞、ニュースでも現実に可動するロボットが大きく取りざたされるようになりました。かつてロボットと言えば工業用の非人間型を指しましたが、現実の21世紀でロボットと言えば、人はロボット犬AIBOなどペット型のものを想像するのではないでしょうか。日本では二足歩行のロボットを各社がこぞって開発し、世界中から注目を集めていますが、これもロボットアニメ文化の影響でしょう。
そのようにして現実の生活にロボットが入りつつある時代、アニメーションの世界でもこれまでにも増して、いろんな年齢層に向け、いろんな切り口の新しいロボットアニメが作り続けられています。それはメディアを超え、国境を越え、全世界に拡大しつつあります。
親子2世代、あるいは3世代でロボットアニメを楽しみ、永遠の繰りかえしがスタートする時代——それが2000年代なのです。これから2010年代に向けて、どんなロボットが現れてくるのでしょうか? それは、もしかしたらあなた自身が作るロボットかもしれませんね。